消え逝く道の標べに

コラムやSSを綴っているブログ。

〔SS〕『スーツの男』

『スーツの男』

 

    ーーここではない。
    僕はそう思った。四方が白く囲まれた真っ白い小さな部屋を飛び出した。僕は息が切れるまで走り回った。すると、同じところに迷い込む。目の前には道が続いていない。部屋に入るしかない。どん詰まりだった。この迷路を抜け出すには何が必要なのだろう。
    ーー何をお探しですか。
    後ろを振り向くと、スーツの姿の男がいた。いつから立っていたのだろう。この男も、扉を開けて入ってきたようだ。不敵な笑みを浮かべているせいか、男の目はとても細くなっていた。ネクタイは上までしっかりと締め挙げられていて、見ているだけで窮屈だった。
    ーー何かを探しています。何かはわからないのだけども。でも、ここにはないんです。
男は不敵な笑みを浮かべたまま、口だけを動かす。とってつけたような顔だった。
    ーーあなたが探しているものは、どこにもないのです。ここではなく、この世界のどこにもない。
    僕は飛び出した。急に、ネクタイの男が怖くなったのだ。人形が話すような不気味さに、全身が震え上がる。僕は走り続けた。
しばらく走り続けると、僕は同じところにふたたび戻ってきたということに気づいた。何度目だろう。
    ーースーツの男が来るかもしれない。
    僕はそう思った。今すぐにでも逃げ出したいが、再び戻ってくる可能性を思えば、ここを抜け出す鍵をもっているのは、スーツの男だけだった。この迷路で、唯一話しのできる人間に出会った。もしかしたら、人の形をした別の生き物かもしれないけど。ともかく、僕はスーツの男を待つことにした。

    ーー何故、座り込んでいるのですか。
    男が来た。僕は待つことに疲れ、半分ほど意識を失っていた。反応が遅くなったおかげで、男は続けて話した。口角はさっきに比べて少しだけ下がっている。
    ーー何をお探しですか。
    僕は怒りを込めて答えた。
    ーー何かを。さっきも言ったじゃないか。
    僕の怒りも虚しく、スーツの男は顔色ひとつ変えない。
    ーーそれでは、ここにあなたのスーツを置いていきます。私の役目はこれで終わりです。では・・・ご武運を。
    僕は、そう言い放ち去っていくスーツの男を見ていた。僕は彼が置いていったスーツを着て、追いかけなければならないと思った。《何か》を捨てて。
    僕は選ばなければならなかった。しかし、スーツの男を追いかける力はすでに残っていなかった。しばらくして、僕は用意されたスーツを手に持ち、ふたたび迷路を彷徨う。数時間、いや数年ほどそうしているように思えた。時間の感覚は消えてしまった。僕は迷路を抜け出せない。手にもったスーツを広げてみる。これも悪くないように思えた。
    僕はスーツを着る。すると、目の前には迷路に迷い込んだ人がいた。そして、口を開く。
    ーー何をお探しですか。

 

(1230文字)

〔SS〕『泡のような人生に』


『泡のような人生に』

 

    キッチンで食器を洗う音がする。男には付き合って二年目の彼女がいて、二ヶ月前に同棲を始めた。親切心からなのか分からないが、彼女はすすんで家事をする。男が仕事で疲れていることを理解しているようだった。
    男の疲労はすでに限界に達していた。仕事では、朝から晩まで酷使され続けた。彼女と出会った大学を卒業し、しかし就職先を間違ってしまったことを、何度後悔したことだろうか。肉体も精神ももはや正常には働いていない。自分の意識を越えたところで、何かが自身を操っているように感じていた。
    彼女は、つねに男に優しく接している。口を開くことは少ない。さらに何ヶ月も経つ頃には、男の頬は痩け、目の下には隈ができ、その姿形からは、《欲求》というものを感じることができなくなるまでにやつれていた。

    ーーもう寝るよ。
    男は彼女にそう告げ、布団に入った。返事はない。彼女の食器を洗う音が、扉を越えて脳内に響く。洗剤の泡がひとつひとつ音を立てて破裂していくのが、はっきり脳内で響いていた。男は耳から入ってくる音を遮断するように、毛布を頭まで被せる。
    男は、彼女から別れを告げられたいと思っていた。毎晩仕事でくたくたになった身体で玄関をくぐると、彼女は黙って夕飯を作っていた。食事中、彼女は何も話さなくなった。気を遣ってくれているのだろう。男は、疑問に感じていた。何ひとつ希望を感じることもなくなった自分と、どうして一緒に暮らしているのだろうか。
    彼女の幸せを願って決別を想う一方で、男は、生きていくために必要な言葉を、体温を、彼女の存在を求めていた。だから、男は別れを告げることができなかった。
    食器のぶつかる音が止まない。男は、薄い扉を一枚挟んだ向こうで、彼女が今どんな顔をしているのかとふと考えた。すると、男はここ数ヶ月もの間、彼女の顔をまともに見てなかったことに気づいた。今その顔は、笑っているだろうか。彼女は一日のうち、何回笑っているのだろうか。
    彼女の鼻唄が聴こえてきた。彼女は、男との人生の何を希望にしているのだろう。男は彼女の人生を想い、布団の中で一人、懺悔していた。
    ーー明日も、はやいのかな。
    気づくと、彼女は布団のなかに入っていた。男は背を向けたまま、彼女の問いに答える。
    ーーごめん。
    しばらくして、やっと出た言葉だった。布団は男の体温と同じ温度を保っていた。またしばらく経ってから、彼女の啜り泣く音が聴こえてきた。

    大量の泡の弾ける音がした。凝縮した小さなそれの中には、彼女と出会った月日がまるまる詰まっていた。男はただ、背中に彼女の体温を感じていた。明日も早い。しかし男にはもう関係がないことのように思えた。男は、啜り泣く音に向かって、言葉を投げかける。
    ーーばからしくなるよな。自分の人生になんの価値もないように感じただろう。ごめんな。たぶん君は・・・考えたはずだ。パートに行っては小銭を稼いで、月に僅かな貯金をして、俺の帰りをただ待つ生活だ。そこに、希望はない。そんな生活のどこに幸福が見いだせるんだ。君は何ひとつ悪くない。俺のせいだ。君は・・・君はいつでも優しかった。もう我慢しないでいい。俺は、もう君を止めない。君も・・・たぶん俺を止めないだろう。だが本当は・・・君は引き止めてほしいのかもしれないし、この無様な生活から身を引く手伝いをしてほしいかもしれない。どっちつかずの思いだって。
    彼女は男が語りだすのを、ただ涙を流しながら、聞いていた。
    ーー俺は気づくのが遅かった。幸福とか安定とか・・・そうした郷愁を抑えることで、なんとか生きながらえることを選んだ。身勝手に・・・・・・遅かった。全てが遅かったんだ。
    男は、気づけば嗚咽混じりの声になっていた。その声には、世界への憎しみと、たった一人の女性への懺悔が含まれていた。彼女は、口を開かない。
    ーー自由のない世界は苦しい。この社会は縦からも横からも、俺を押しつぶそうとしていた。乗り越えられると思っていた。本当は、最初からとっくに潰れていたのかもしれない。いっそ・・・。

    彼女の啜り泣く声はいつの間にか止んでいた。布団は、男の嗚咽を吸収する。

    気づいたら、男は眠っていた。その眠りは、今まで感じたこともないような快楽だった。朝目が覚めると、彼女が荷物をまとめている。彼女は、赤くなった目を優しく男に向け、口を開いた。
    ーー今日は・・・何もないんでしょう。私も、今朝パート辞めちゃった。・・・あと今日はあなたの誕生日だわ。気づいてなかったでしょう?おめでとう。
    彼女は、ふふっと笑っていた。テーブルの上には、『沖縄特集』と書かれた旅行情報誌が置かれていた。
    ーー「いつか行こう」って言ってたじゃない。それを今日にするのはどう?たぶん、これまでにないくらい・・・素敵だと思うわ。
    男は目を丸めたまま、彼女の言葉を飲み込む。世界が開かれていくのを、感じた。男は『沖縄特集』を手にとって眺め、そして「あぁ、最高だ」とだけ言って、荷造りをはじめる。それは、新しい朝だった。男は太陽が祝福してくれているように感じた。今まで体験したことのない心地のよさが、男の身を包んでいる。男の涙は床に落ち、太陽の光に輝いたまま、音を立てずに弾けていった。男は求人情報誌に被った埃を払い、鞄に無造作に放り込む。どうせ一度弾けた人生だ、どうにでもしてやる。男と女は、少しの希望を胸に抱えて歩きだす。新しい生活が始まる。

 

(2350文字)

〔SS〕『五分前』

 

『五分前』

 

    「世界五分前仮説って知ってる?」
    ユリカがそう聞いてくる。放課後、私たちは教室の片隅で不毛な議論をするのが日課だった。
    「知ってるよ。あの、世界が五分前にできたかもしれないってやつ」
    「そう。カオリは信じる?」
    ユリカが食いついてくる。彼女は思考実験の類いが大好きなのだ。私は彼女の趣向に飽き飽きしていたが、彼女への好奇心から話しに付き合う。ユリカは、他の子と違って少し《変わっている》。
    「信じないよ。だって」
    私がそう言いかけたところで、ユリカが遮る。彼女はだいぶ興奮気味で、若干瞳孔が開いている。彼女はいつもと同じく、議論の前提を整理するだろう。ほら、今にも。
    「わたしね、昨日お風呂に入っていたの。そうしたら、気づいたときにはベッドに居たのよ」
    「そうなんだ」
    私は適当に相づちを打つ。片手でペンを器用に回しながら。
    「わたしは、その途切れた時間に世界が新しく生まれ変わったんだって思うの」
    ユリカの顔をじっと見る。とんでも理論だ。世界は彼女中心に回っているのだろうか。彼女は少し間をあけて、話しを続けた。
    「神さまじゃないの。わたしがその瞬間、世界を作ったのよ。新しい世界を始めたの。意味わかる?」
    ユリカの額には、今にも破裂しそうな血管が浮かんでいた。それはパンパンに膨らんで、醜かった。きっと、それは触ったらブヨブヨしているだろう。彼女の興奮は、暗がりの教室で異様な響きを立てている。やっと私の番がくる。
    「ユリカが世界を作ったとして、一体それを誰が、いつ、どのように証明できるの?」
私は、はっとした。この議論は循環してしまう。しまった、と思った。以前、この手の循環論に巻き込まれて、三十分近く話し込む羽目になったのだ。カオリはすぐに「いや、」と付け加えた。
    「いや、それなら私の存在もユリカが作ったということ?」
    ユリカの返事は早かった。
    「ううん、カオリは関係ないわ。わたしの世界だもの」
    私は動揺して、ペンを机の下へ落としてしまった。ユリカの答えは想定外だった。まさか、ユリカが独我論者だったとは。こうなったら、もはや、どこから否定すればいいのかわからない。
    「たしかに、世界が五分前に創られたということも否定はできないし、ユリカが世界を創ったということも否定はできないかもしれない」

私がそう言うと、ユリカは少し表情を緩ませた。
    「よかった、信じてくれたのね。カオリに話してよかったわ。そのとき、わたしは《新しい存在》になったの。その話しも、聞いてくれる?」
    根負けするしかなかった。私はこの手口を知っていた。街中でアンケートと偽って「サインだけでいいから」と言って、そのあとに「募金活動をしている」と言うと、募金率が上がるというアレだ。つまり、うまいこと誘導されてしまった。
    「いいよ」
    しぶしぶと、しかし悟られないよう私はそう言った。
    「昨日学校が終わって、一人でゲームセンターに行ったの。息抜きに」
    ユリカは話しを続けた。
    「わたし、先生と《関係を持ってる》って話し、したよね。ちょっと前に喧嘩しちゃったの。彼、《そういうこと》する時、少し変わった趣味があってね・・・まぁ、それはいいんだけど。そうしたら昨日、先生がわたしの後ろをついてきてたみたいで・・・UFOキャッチャーの中にいる汚れたぬいぐるみを見ていたら、突然、腕を掴まれたの」
    なんだか話しの雲行きが怪しくなっていた。確かに、先生と関係を持っていたのは前に聞いたけど、別にユリカは真面目すぎるわけじゃないし、そのうち《火遊び》にも飽きるだろうとは思ってたんだけど。
    「それで、どうしたの」
    私は、ユリカの話しに聞き入った。心配している調子で聞いたフリをしたけど、それはたんなる好奇心からだった。
    「わたし、すごいびっくりしちゃって。鬼みたいな形相で腕を握られて、耳元で『お前、他にも男いるんだろ』って言ってきた。
    「でもね、先生の勘違いなの。わたし、そもそも誰のことも好きじゃないし。先生と《そういうこと》をしてたのは、彼の破滅願望が、わたしの《汚れ》を気にさせなくする、心地いいものだったってだけ。
    でね、『お前の家に行きたい』って。腕に先生の爪が食いこんで痛かったわ・・・今日は父が居るからだめって、言ったんだけど」
    私は、まさかユリカがそんなことに巻き込まれているなんて全く思っていなかったから、少し驚いた。彼女は、大抵話しの途中で《そういうこと》について話してくれる。私の好奇心がそれに反応するのだ。だから、私はそれを抑えられなかった。いつの間にか、ユリカは私の落としたペンを拾って、見つめていた。
    「先生があまりにもしつこいから、もう、ちょうどいいやって思ったの。あのね、わたし、父に虐待されてるの。《そういうこと》はないけどね。毎日、吐くまで蹴られていた」
    ユリカは、いつからか体育の授業に参加していなかった。全身の痣が、見えてしまうから。しかし、無数の痛々しく腫れた脚は、スカートでは隠せない。だから、みんななんとなく察していたけど、誰もなにも言わなかった。もちろん私も。ユリカは続けた。
    「わたしは、変わりたかった。だから、好きでもない先生と《そういうこと》をしてみたり、ピアスを開けてみたり、髪を染めてみたりした。でも、何も変わらなかった。むしろ、悪化していったの。痣は次々に増えていった。すべて、何ひとつうまくいかなかったわ。
    だから、ちょうどよかったの。わたしは、最後の選択を用意していたから。それで変われなかったら、わたしは《おかしい》。だって、人は変われるって言うじゃない?」
    唾を飲み込む音が、日が差さなくなった教室に響いたような気がした。ユリカの瞳孔はどんどん開いていっている。日は完全に傾いてしまっていた。教室の半分が、暗闇に包み込まれている。カーテンだけが、微かに揺れていた。
    「最後の選択って、なに?」
    沈黙を破り、私が口を開いたときには、ユリカの半身は暗闇に溶け込んでいた。
    「最後の選択は二つあった。ひとつは、わたしが消えてしまうこと。これは思うより難しかった。何度もしようとしたけど・・・二つめは、今、から話す」
    ユリカが静かに、淡々と話しを続ける。
    「わたしは、先生をリビングまで連れていった。父も先生もとっても驚いた顔をしていたわ。だって、先生は《そういうこと》をしようと思ってついて来たし、父も、日課があったからね。わたしは、こっそり果物包丁を握った」
    まともに息ができない。これがユリカの《創作》だと解釈しようとしても、暗闇に溶けた彼女が、心の奥へと直接侵食してきているようだった。心臓を掴まれているような苦しさ。だから私は、彼女に、この話しの結末に、惹き付けられる。

    「あとは簡単だった。わたしは、間髪入れずに先生を後ろから何回か刺してみた。何の抵抗もなかった。変な感触だったわ、思ったより嫌ではなかったけど。刺しては抜いて・・・ドプドプと血が溢れていた。開封したばかりのペットボトルを急に傾けたみたいに。先生は振り返らずに、父と見つあっていた。傷口を抑えられないから手の行き場がなさそうだった。すこしして倒れたあと、なんだか寂しそうにわたしを見ていたわ。
    父は、何が起こったのか分からなかったみたい。先生に隠れて私が見えなかったから、いきなり先生が吐血するんだもの。その血が父の顔にかかってるのに、まったく動かなかった。
    わたしは躊躇せず、倒れた先生を跨いで父に近づいていったわ。赤く染まった包丁を握って。私は生まれ変わっている最中だったんだと思う。あとは《ソレ》を消滅させるだけだった。父はだんだん顔を引き攣らせていったわ。わたしが一歩足を進めるたびに、現実を受け入れていく子供みたいに、顔つきが変わっていった。
    もうそのとき、わたしゲラゲラ笑っちゃった。父はソファに腰を浅く掛けたまま、覆いかぶさるように振りかざす手を止めもせず、包丁を顔面から受け入れたわ。
    《ソレ》は、先生の背中より硬かった。それでもわたしの体重が乗ってたから。すっごく簡単に刺さっていった」
    ユリカはもうどこに居るのか、私には分からなかった。教室のなかで、声だけが反響していた。私は、好奇心と恐怖で、頭が重かった。
    「で、最初の話しに戻るね。わたしは、《ソレ》で汚れちゃったから、お風呂に入ったの。わたしは、無心で身体を洗ってた。顔にも、首にも胸にも、血が飛び散っていたわ。何度も何度も、肌が痛くなるまで擦った。汚い茶色い血がついたシャツも、リビングの《ソレ》も、どうでもよくなるくらい。ひたすらわたしは身体を擦ったの。
    とても長い時間、わたしは身体を擦っていたわ。蹴られた痛みよりも、《そういうこと》を初めてしたときの痛みよりも、今も全身が痺れるように、ビリビリして痛いわ。それで、お風呂を出て、リビングの《ソレ》には目もやらないで、部屋に戻って、ベッドに飛び込んだ。力のいる作業をしたから・・・それで時計を見たら、お風呂に入る前には六時二十三分だったのが、六時二十八分だった。

    わずか五分のことだった。世界が、五分で変わった。わたしは、五分で世界を創造した。だって、五分前のわたしと何もかもが全て違っていたわ。わたしは、生まれ変わったの。新しい存在に」

 

    遠くでサイレンの音がする。それは、だんだん近くなってきているように感じる。ユリカは闇に溶けてしまっていて、姿は見えない。もう、声も聞こえなくなってしまった。

    私はふと時計を確認すると、ユリカと話してからたった五分しか経っていなかったことに気づいた。六時二十八分だ。世界は、深い闇に包まれていった。

 

(4180文字)

言葉を使うこと、その真髄

 

時間の速度に比例して、焦燥感が増していく。どうも、くららです。

 

言葉を使う仕事をしたい。というといくらか漠然としているのだけど、かい摘んで言えば、僕の言葉が誰か苦しんでいる人に届くような未来を思い描いている。

 

僕は言葉の隙間を縫うように、何年も反芻していた。僕の経験はすべて言葉に集約される。言葉をいかに使うか、言葉をいかに生み出すか、それが僕の課題だった。僕にとって唯一で最高の言葉。言語を生み出したい。それが誰かにとっても、最高の言葉になれば。いや、最高の文脈を、至高の文脈を、僕は作りたい。僕の、物語を・・・。

 

言葉を使うこと、その真髄

 

僕は日本語ラップが随分昔から好きなのだけど、それは俗にいう、彼らの言葉が「リアル」だからだ。一般に彼らの言葉が「リアル」だと言われるのは、アウトローにおいての切り詰めた生活の描写であったり、危ない薬に手を出しての音楽をしていたりと、まぁその定義は色々あるのだけど。

 

僕が好きなのは、ポエトリーの類いで、言葉に比重を置いているラップである。

彼らは詩人だ。

 

有限の人生のなかで どうして可能性を無限にした?

リストラみたくMPCが 俺の肩を叩けば良いのに

 

youtu.be

 

 

「音楽やめられたらよかった」という気持ちを、上のように表現している。比喩が自由に躍り出る音楽を僕は美しいと思う。言葉を使うこと、その真髄を、僕は彼らから学んだ。

 

少し遡るけど、高校の時、ある音楽に救われた。それは、神門(ごうど)というラッパーの曲だった。ラップの美しさを、彼から学んだ。それから、何度もライブに足を運んだ。ずっと「死にたい」をラップに助けられ、僕もラップの世界に足を踏み入れた。ただ、それはあまりうまくいくものじゃなかった。

 

今でもずっとラップを聴いてる。ありきたりの言葉じゃなく彼らの言葉で、完結しないストーリーを言葉に還元して、その生き様を曲に投影している。彼らが必死に頑張っているから、僕も頑張っていけそうになる。

 

僕は、改めて神門にお礼を言いたいと思っている。今でもアルバムはすぐに買う。いつか、またどこかで会えたらいい。僕はもうラップをしていないけど、ものを書いている。きっと僕のことも覚えていないだろうけど、あなたがいることで生きていられた。あなたが売れることを、こっそり願っている。さぁ残そう、二人がいた跡を。

 

youtu.be

 

 

(980文字)

 

平山瑞穂さんという作家について

 

一日経ってもけろっとしていないのは、あまりよくない兆候。どうも、くららです。

 

僕の好きな作家さんであまり有名な方ではないけど、なんとなく昨夜久しぶりに思い出したため、ネットで検索してみた。 

hirayama-mizuho.cocolog-nifty.com

 

その方のブログに、目を通してみた。僕の記憶が正しければ、書店で『あの日の僕らにさよなら』という本のタイトルに惹かれて手に取ったのを覚えている。その後、何冊か買っては読んでいた。

 

ブログの更新が12月で止まってるけど、その後はどうなっているのだろう。執筆に勤しんでいるのだろうか。

 

 僕の好きだったミュージシャンが、「東京は夢破れた人間の屍で出来ている」と叫んでいたことを思い出す。昨日の今日で申し訳ないが、僕はやはり、「夢を追いかける」と言って、純粋な気持ちで追いかけるほどの力がない。僕は人生を賭けて、周囲の人を幸せにして、可能な限りその範囲を広げていきたい。僕はその中で、慰めを探しているのだ。もう、周囲の人の手を振り切ってまで、夢を追いかけることはできない。いや、そもそも、僕の夢は、まずはちゃんと生きてくことだ。母の幸せを願って、友人たちの幸せを願って、できれば、僕も幸せになりたい。僕にとっての夢は、その幸せを少しでも多く増やすこと、慰めを与えて、いや、各人がそれを掴む力を与えることができればいい。僕がいても変わらない世界なら、そこにいる必要はない。そこに立つことで救われるような人がいるなら、僕はそこに立つかもしれない。しかしそんな場所は、もうほとんどないように思う。きっと、そこに立つ必要があるのは、僕ではない。僕は、消え失せる寸前のところで、もがいていればいい。僕は少しだけ前に出て、手を差し伸べたい。

 

なんとなく、平山瑞穂さんに対して、シンパシーを感じてしまう。彼の著書を読んでいたもっとも大きな理由は、「過去(記憶)への郷愁」の描写の美しさに尽きると思っている。僕の最初に挙げたSS(ショート・ショート)も、かなり方向性は違うが、過去を扱ったものだ。記憶と恋愛を絡めるという軸は、彼の影響を受けているのかもしれない。つまり、彼の過去に対する意識が、僕にはとても美しいと感じる。言葉で説明するのはとても難しいのだけど、彼の描写力がもっとも発揮されているのが、その部分に凝集している。

 

彼のブログでは、「売れない」ことに対する気持ちも綴られている。本来は、社会人だったらしい。そこから、作家の道へと。その選択に後悔しないでほしいと願うものの、僕にそんなことを言える義理はないのだろう。最近はもっぱら読んでいなかったけど、今度本屋に赴いたら、彼の新刊を手に取ってみよう。たぶん、その中には新しいものへの挑戦も含まれているだろうけど、今から楽しみにしている。

あの日の僕らにさよなら (新潮文庫)

あの日の僕らにさよなら (新潮文庫)

 

 

ちなみにしたの本は、映画化しています。たぶん、こちらの方が一般ウケします。

忘れないと誓ったぼくがいた(新潮文庫)

忘れないと誓ったぼくがいた(新潮文庫)

 

 (※アフィはしていないので、ここから購入することに対する僕への収益還元はありません。興味を持ってくれた方は、ぜひ書店で手にとって購入してくだされば嬉しく思います。)

 

 

今回は短いですが、これにて。

 

先日挙げた、SS『物語の終わりには』を、ちゃんとした短編にしたいなと思っています。まだ未読の方は、良かったら読んで見てください。あまりにいたらなすぎて申し訳ないですが、感想・コメントなどお待ちしております。

kurara121.hatenablog.com

 

 

(1600文字)

懊悩(小説の話し)

 

自分の居場所に常に悩んでは、引き戻せない過去を夢見ている。どうも、くららです。

 

すぐに結果が出るなんてことはないけど、どこかに運が転がっていて、僕のもとにごろごろと音を立てながら落ちてこないかと思っている。多分、そんな都合のいいことはないけど。

 

そう、最近悩みがあるんです。僕のあまりに大したことのない、恥ずかしいくらい出来の悪い駄作小説を公開する場所をどこにしようかというものです。

はてなブログでも二つだけ公開しているのですが、「横書きだということ」と、「なんとなく雰囲気と噛み合わない」と言いう理由から、違うサイトで公開しようかと考えています。そもそもはてなブログは、ブログですし、当たり前なんですがね・・・。

 

ただこのブログを始めてから、ほとんど日記のようなものもありますが、楽しくものを書く癖をつけることもできていますし、このブログ自体は続けていきたいなと思っています。ブログでもなんでも、とにかく文章を書くこと自体が、僕の力になりそうな気もします。

 

小説を公開する場所、これを決めることは、住居を決めるくらい重要なんですよね。生配信でも同じでしたが、「ふわっち」や「ツイキャス」、「LINELIVE」などがある中で、僕は「SHOWROOM」を選びました。その理由は、雰囲気が良かったからという一択。今思えば、アイドル志望の方や、モデルやタレント志望の人たちが多い中では、おそらく場違いでしたが・・・。ただ優しい方に囲まれて配信できているだけでも、ここにしてよかった、という思いが強いです。

 

小説投稿サイトは、いくつかあるのですが、まとめてある親切なサイトをリンクしておきますね。

ebookwriter.wp.xdomain.jp

 

とりあえず名前だけ挙げると、

こんな感じです。あとのサイトは女性向けだったりするので割愛しました。

この中で縦書きなのは、「のべらぼ」ですね。ここは、雰囲気もいいような気がします。

僕は、縦書きのほうが好きです。実際の小説を読む感覚に近いので(電子書籍は少し苦手ですが)。

 

調べてみたところ、「小説家になろう」が一番大手で、次いで「アルファポリス」と「カクヨム」が追っている感じです。「アルファポリス」は、あまりいい話しを聞かないですね。アプリもありますし、投稿する側からしたら簡単そうな感じがします。

 

どの投稿サイトもそれぞれ「(電子)書籍化」の可能性がありそうなので、ここはそこまで差別化にならないかな、といった印象。ただ、そのサイトでエンタメ小説がどれほど読まれているのかということは注意したいな、と。

 

あとは、上のサイトで挙げられていないサイトでは、

があります。この二つのサイトも、それぞれかなり興味深いのだけども、「書籍化」というオマケはついこない模様。練習としては、とても優秀な場所ではあるけども。

 

さて、どうするべきか。複数のサイトで重複しても大丈夫らしいけど、あまり二足のわらじが好きではない・・・。

 

個人的には、縦書きであるという理由で、「のべらぼ」がいちばん気になります。ただおそらくですが、読者がかなり少ないと感じます。モチベーションを上げるには、多くの人に読まれるほうがいいです(ただ、「なろう」も、コメント数はさほど多くないように見えます)。

 

そして何より、短編で読まれるところが少ない。この機会に、長編に挑戦するべきでしょうか。

 

結局・・・一周回ってわからなくなってしまった。短編と長編でサイトを分けるべきだろうか。

 

そもそも、長編と短編で使う技量はまったく違うものだから、僕は長編も練習するべきなのだろう。読むことに関しては、研究のスキルが活きるかもしれないけど、書くことに関してはまるっきり初心者だ。

 

長編を書くとしたら、半年くらいの期間を必要としそうだ。毎日更新するのがよしなら、余計にある程度書き溜めておく必要も出てくる。

 

これから、「就活」と「配信」と「研究」と「趣味の読書ともの書き」を並行するのは無理だ。この無謀さに今さら気づいた。この無計画さが腹立たしい。

 

とにかく就活が終わるまでは、あまり考えないようにしよう。そのあとは、研究を終わらせる。ただ、これだけだ。

 

就活が終われば、長い時間をかけて自分のやりたいことに向き合っていく。その間にも、少しづつ書き溜めていこう。

 

ただ夢見て、ゆっくり生きていく。行動がなくても、悩んでいたことが行動を上回るように。そう思わせるような大きいことを。(・・・なんか無性に腹が立ってきた)舐めてる奴らの足元を掬ってやればいい。

 

僕なら、大丈夫だ。

 

よし。

 

(1960文字)

「自己肯定感」というバケモノ③

 

③といいつつ、しばらく日が空いてしまいました。どうも、くららです。

 

ちなみに、この自己肯定感にまつわる①と②と③というタイトルですが、実のところかなり無計画に進行しているので、内容自体は「自己肯定感」という文字をもとに縦横無尽に泳いでいるだけです。

 

僕が思うに、この言葉は非常に面白く、どこへでも行ける飛行機のようなもので、うまく乗り換えさえできれば、実に多くのところへ行けてしまうのです。例えば、うつ病の人が何かを語ったときに、「君は自己肯定感が低いね」と言われてしまえば、それまでです。他の精神病も同様に、この言葉が指し示す範囲はとても広いのです。言葉は、くるくると姿形を変えるために、このような汎用性の高い言葉は注意が必要です(ちなみに僕はあまりこの言葉を使いません)。

 

①と②をまだ読んでない人は、ぜひ読んでみてください。この言葉の便利さがわかると思います。

 

kurara121.hatenablog.com

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「自己肯定感」というバケモノ③

 ※今回のコラムは7割ふざけています。2割は本心、1割は・・・虚無ですね、はい。

 

今回は、この「自己肯定感」を、周囲の人から事例として引っ張ってきます。僕は別に精神分析家でもないので、ちょっとした真似事にすぎません(不快に思う方は、戻るボタンをクリックしてください)。

 

 

まず、僕がとっても自己肯定感が高い(あるいは強い)と思う人をあげます。

 

皆さんは「YouTuberのヒカル」をご存知でしょうか?まぁ、色々と問題を起こした人ですね。

彼のツイッターを見てみると、とても啓発的というか、教祖さまというか、なんというかまぁ、とにかく自己肯定感が高い。ツイートの8割は自己肯定のものです。

 

そこまで自分を肯定しようとするなら、ツイートすることによって自分に言い聞かせるという点でも、もはや自己肯定感が低いような気もしますが、それは置いておきますね(前提無視)。 

 

  

 

過去のものまで遡って眺めていたら嘔き気を催してきたので、これくらいにしておきます(さらに言っておくと、ヒカルさんのアンチではないです。お金を稼ぐことに関しては長けていると思いますし、行動力はすごいと思います。ただ、僕はこの手の捻りのない言説が苦手なのです。ようは、つまらんのです)。

 

話を戻すと、僕が気持ち悪いと思った理由と関係していますが、自己肯定感に溢れすぎ!!!!ってことです。もちろん、毎日毎時間そんなことないでしょう。ただ、あまりに輝きすぎて、めまいがしてきそうです。なんてかっこいいんでしょう。まるでこうしたツイートが聖書のように扱われている理由もわかります。みんな目が眩んでしまっているのでしょう。

 

また、内容は変わりますが、ヒカルは圧倒的な強者なんですよね。だから例えば、次のツイートの言説は、僕にとって恐怖の対象です。

 

 

元のツイートもあれですが。努力とか結果が好きなようですね。多くの人は、そうですが。

ちなみに、ヒカルの弱者救済(これは、学歴のない人に対してのアプローチの件です)は、明らかに上から手を差し伸べています。どんな形であれそれ自体は素敵なことですが、彼はそれをあまりに表に出しすぎていて手放しでかっこいいとは思えない。こう思うのは、僕だけかな。たぶんやけど。

 

次は、実は自己肯定感が低いのではないか、という人を挙げます。

 

 

僕、ダイゴのことが結構好きなんですが、こうしたカテゴライズを彼はよく行なうんですよね。

賢い人はこうする、愚かな人はこうする、とか。もう一つ、引用してみましょう。

 

 

 これもまた、他人をカテゴライズしています。彼の職業柄、まぁ当然といえばそうなんですが、「他人をカテゴライズするという行為は、自己肯定感の低さから引き出される」とよく言います。ソースは、忘却の彼方に置いてきました。

 

彼も実のところ、自己肯定感が低いのではないでしょうか。ずっと(毎日毎時間)低いようには見えませんが、時折、そのように見えることがあります。

 

前にもお話ししましたが、防衛としての暴力というものがあり、他人をカテゴライズすることは一種の暴力になり得るのです。それが、たとえ防衛だとしても・・・。ちなみに、僕もこうして他人をカテゴライズしているので自己肯定感が低いと言えますね。そして、暴力を振りかざしていることを自覚していて、なお振りかざすようなクズだということも判明しました。申し訳ない、だけど、これが俺やから!!!

 

冒頭にも言いましたが、「自己肯定感」という言葉がさす意味は、便利かつ広範囲すぎるので、まぁ、そんな「傾向がある」程度に考えるのが良さそうです。(暴論)

 

最後に、タイトルの「バケモノ」ですが、まったく深い意味はありません。最後まで読んでくれて、ありがとうございました。

 

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