小説家になりたいくらら

コラムやSS、短編を綴っているブログ。大学院生であり就活生。生きていくことに必死です。

『回生』

 

『回生』(SS)


    飛び降りる夢を見た。見たことのない緑色の壁をしたビルの八階から、何度も何度も飛び降りる夢だ。落下速度は遅い。走馬灯が流れだす。しかしそこに楽しい思い出はひとつもなく、人生への後悔で埋め尽くされている。
    長い間走馬灯を見せられたあと、自分の身体が地面に衝突する直前であることに気づく。僕は、腕を地面に向けて真っ直ぐ伸ばしている。足もピンっと張っている。逆立ちのポーズのまま、地面と衝突する。すると、手首だったものと肩だったものが一瞬にしてぴったりとくっつく。血は、存在を誇張するように辺り一面に撒き散らされ、地面を覆っていく。
    肘のあたりの綺麗に伸びた骨が皮膚を突き破って飛び出し、どこかに飛んでいったのが見えた。僕はその様をしっかり見届け、激痛に悶えている。僕は、僕を空中から眺める。もはやどこに意識があるのか分からない。僕は僕の行く末を見届ける。最後まで意識的に、僕は僕を観察する。こんなことができるのは人間だけだ、そんなことを考えていると、視界が暗転してしまう。
    僕はまた、見たことのない緑色の壁をしたビルの八階に立っている。自分が生きていることをしっかりと実感する。すこし経ってから、錆びついた柵に身体を乗りだす。

 

(540文字)